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ドラえもんをはじめとする藤子・F・不二雄作品の少し変な魅力をたっぷりとお届けします。

【帰ってきた変ドラ】~12巻すべて見せます!~F先生の天才的作画演出力が大爆発!『勉強べやの釣り堀』

time 2017/03/19

【帰ってきた変ドラ】~12巻すべて見せます!~F先生の天才的作画演出力が大爆発!『勉強べやの釣り堀』


~ALL ABOUT 12~

変ドラ第12回、その2
「勉強べやの釣り堀」
初出~小学二年生1976年11月号~

ドラえもんの数多い魅力の一つに(このサイトで最も使用頻度の多い言い回しでしょうねコレ)、部屋の中でなんでも済ませてしまう、言うなれば「居ながら系の道具」を使うネタがある。

その中でも「大雪山がやってきた」(この話の凄まじいスケールは是非今後取り上げねばならない)「温泉旅行」などと並ぶ傑作が今回の話。

また、個人的に(いや、数多くの人が)特別印象深い理由は、テレビ朝日でのドラえもんアニメ化の際に、コロコロコミックで紹介された記事に使われていたのが、この話の画像だったからだ。試験的に作られた、いわゆるパイロット版だったようですが、この話を使うってのはかなりナイスな選択だと今でも思う。

話はこれまた簡単、スネ夫&ジャイアンに「ばかみたいにつれる」川を紹介(自慢?)されたのび太とドラえもんだが、「あんたは道を歩いてても、どぶへおっこちる人よ。」とママにダメ出しをされる。でも行きたい。では……

と言う感じ。

どうでも良いですけど、ママの先の科白と言い、野比家の親(はてはF作品全般)の会話って上流のイメージがないですか。パパの「きみ」とか、のび太に「あなたは」とか「人よ」とか。子どもの頃に何となくそう思ってました。

閑話休題

で、この話1コマ目から印象的なコレで始まる。

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑いわゆる「ばかみたいに」釣れた魚たち。この「ばかみたいに」って修辞句が子供心にかなりブームだったのを覚えていますし、実際今でもかなりの使用頻度です。

と言うわけで、ママにダメ出しをされたのび太と、決してドジではないはずのドラえもんも優しく一緒に部屋に閉じこもる。こういう何時も一緒にと言う中期ドラえもんの感覚は大好きです。初期は一人で暴走するし、後期は他に猫友達を作ったりして何か二人の絆が薄れている感じが…

それにしても「川のふちなんかいったらおぼれる」と言うママの警告を逆手に取るこのトンチ感覚も、かなり他の漫画では味わえない感覚ですよね。

のび太も得意げに(こういう悪知恵だけは高い)コレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑結果、おぼれるどころではない危機にまで発展するのが、F氏のギャグスピリットですがね。ホント落語的です(ってよく書きますが、全然落語には詳しくないんですけどね。はははは)。

そして、あまりにも魅力的な道具である「おざしきつりぼり」登場。おざしきつりぼりも、あんまり使わない語彙ですよねえ。子供としては。ここらの和的感覚もF先生のネーミングセンスの特徴。

そして、この魅力的展開!

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑これこれ! これなんですよ。丸めてんですからね、なんつっても。このお座敷感覚(?)が素晴らしい。正座して待ってるのび太も実にナイス。

ドラえもんの道具って、要するにおもちゃの魅力なんですよね。おもちゃって突き詰めれば代償行為なんですよ。つまり「ごっこ」の楽しさが、おもちゃの魅力の根幹にあるわけですよね。言ってみれば子供の遊びってのは=そうなんですが。

極論で言うと、ドラえもんがどうしてこんなに人気が出たのかってのは、毎回新しいおもちゃで遊ぶのび太に感情移入して、読者もそのおもちゃで疑似遊戯できるのが魅力なんだと思うんですよ。

そして、そのおもちゃ的発想がF氏の場合はずば抜けてすばらしいってのがポイントですな。

だって、部屋にジャングル持ってきたり、エベレストのてっぺんを持ってきたり、挙げ句に釣り堀作ったりって、ごっこの極めつけですよ。このぐうたら嗜好と、おもちゃ感覚が絶妙に組み合わさった道具ってのは、やっぱり魅力的です。

更に、F氏には圧倒的な描写力演出力と言う武器があるので、どうしようもない独特の没入感を読者に生じさせる。

そのが圧倒的に味わえるのもこの話の魅力。

先ずコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑注目すべきは左隅の「反り返り」!一枚の紙(?)に過ぎないその表面が川と化す、このだまし絵というか、二次元的漫画演出の魅力。しかも、縦線数本の極めて最小限の描写で抑えつつ、具体的なのび太の科白で、完全に道具の効果を説明する素晴らしさ。

とどめにコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑うおおおお! この空間感覚! もうどうなってんのコレ? しかも、ドラえもんが手を放すと反対側が反り返ってんの。細かい!

いやあ、最小で最高の効果を上げるのが演出の命題ならば、F氏はやっぱり天才ですよ。

さあ、釣ろう!

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑傑作「タタミの田んぼ」に勝るとも劣らないセンス・オブ・ワンダーですねえ(あっちは稲が茂ると言う尋常ならざる展開があるのでもっと凄いけど)。ドラえもんの道具は、ホント夢の具現化ですよねえ。子どもの頃それほど釣りには興味がなかったですが、これなら一日中遊びますよホント。

しかし、そこはギャグ漫画である事を絶対に忘れないF氏ですからね、こんな美味しい設定をあの手この手でハチャメチャにします。

先ずお約束で、

「きょうそうしようか。」

と、似合わずこのコマで息巻いているのび太が、次のコマでいきなり

「ちっともつれない」!

ははははは。1コマも置かずにですからね、根気なさすぎですのび太。

しかもコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑イキナリ顔をつける感覚はのび太ですよねえ。でも、部屋に川面ができたら、やりかねない気にさせるあたりも恐い。だって、気になるじゃないですか。そのちょっとした好奇心を明示するための描写だとしたら大したモンですよ。次の川の中からのコマが実に素晴らしい。波紋描写が現実感有るんですよねえ。顔だけ川の中に突きでてんですコレ。

だけど、のび太メガネは外そうや。

「いるのにつれないということは、道ぐがわるいんだ。」

と言う極めて自分の腕を棚に上げた論理的理屈を真顔で言うのび太に、優しいドラえもんはある道具を出す。

後々結構重宝する、サブ道具としては印象深さの度合いが凄いコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑針じゃない。&しかも手がマジックの時の白手袋! こういうセンスは比類ないですなホント。完全に「これしかないでしょう」っていうネーミングとデザイン。いやあ「グー」としか言えないです。

釣りと言う行為そのものの意味づけを粉々にするこの道具ですが、初めてした釣りで一匹しかつれなかったボクは、ずっと一日中「手ばりがあればなあ」と思っていたモンです。

それぐらい、もうそれこそ「ばかみたいに」釣りまくる二人の嬉しそうな雰囲気が魅力的で。

この難易度の設定感覚もおもちゃというかゲームとしての感覚がいいんでしょうね。

ところが、やっぱり外さないF氏はまたまた笑わせる。

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑しっかり掴んでますよ。魚の顔もかなりナイス。

そして、大爆笑のコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑いやあ、よもやジャイアンですからねえ。ホント笑いましたよコレ。のび&ドラの「?」ブリも素晴らしくて。確かにそりゃそうだよですが。

この空間軸のつながりによって、絶妙に世界観の構築が成されている点にも大きく注目したいところです。部屋に釣り堀を作っているんではなくて、他の空間を持ってくると言うこの道具の特製がこの話のキモなんですからね。

また、話の冒頭で、「昼めしくったらまた行こうな。」と言うジャイ&スネの科白が伏線だったという度肝抜く展開。この巧妙さがF氏の魅力であることは言うまでもない。(しかし、何気にその時ジャイアン&スネ夫がのび太たちを誘わないのも注目。二人の後ろ姿が微妙な感じでいいです)

こういう空間軸と時間軸がしっかり練り上げられているのって大好きです。

それにしても、片目だけ見えるジャイアンが噴火してるあたりや、のび太の仰天面など、笑えるポイントが多いのに、続いてもっと面白いコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑スネ夫が高ポイントですよねえ。「そんな、ばかな。」だって。ははははは。顔がもう大爆笑。ただ、ここでもっと笑うなら、ジャイアンの気持ちになることです。いきなり川に引きずり込まれた挙げ句に、のび太とドラえもんが居るわ、そのまま投げ出されてまた川の底に。「?」一つじゃ済まない事態ですよまったく。まあ、突然ジャイアンが川に引きずりこまれるって状況もスネ夫にしてみれば相当笑えますが。

何にしてもコレっきりと言う潔さが魅力です。

「トムとジェリー」で、トムが釣りをする話があるんですが、ブルさんに池の反対側からもの凄い勢い&同じ姿勢で引きずり込まれるギャグ描写があるんですが、多分ジャイアンもそういう状態だったんでしょうね。

一方のび太とドラえもんは、諦めきれずに(懲りずに?)またつりぼりを拡げます。(ジャイアンがいたからって、しまっちゃうドラえもんも変でいいですけど)

そして、ここからがこの話のギャグの神髄です。いわゆる波状攻撃パターン

先ずコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑子どもの頃からこの水たまりだったと言う展開が大好きでした。F氏も何気なくここは流す程度なんですが、前振りとして効果と、やっぱり「魚が釣れない」→「水たまりだった」と言う知的帰結が好きだったんですね。

ならばと、遠くにするやコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑二人のポーズ! のび太正座で両手パー、ドラはあぐらで「3」口。科白が凄く冷静に「なみがたって来た。」なのが最高に笑える、極めて「F間」ですな。部屋に海ですからねえ。この風呂敷の広がりかたが実にパターンで笑える。もう釣り竿すら持ってない二人が実にわかっていらっしゃる。

そして、風呂敷の頂点がコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑ちょうどこの話が描かれる一年前に歴史的傑作映画「ジョーズ」が公開されているんですが、F氏は当然大好きだったんでしょうねえ。ドラえもんって何気にサメだらけですから。しかし、勉強部屋にサメですからね。恐すぎ&面白すぎ。ドラえもんのパニック目とか、何故か顔面紅潮ののび太の勉強道具攻撃もリアルで良い。海=サメと言う図式が勝ってます。

しかも、次のコマで、何の解決描写もせずに、次の水面を探す二人の感情のつながりの希薄さが異常で笑える。サメにまで襲撃されているのにギャグの操り人形と化した二人は全然懲りてない。のび太ときたら正座で汗たらしながら

「うみはあぶない。」

と至極当然のセリフをカマして笑わせる。

指図されるままに困惑顔でチャンネルを合わせるドラえもんも実は笑える。何やってんだこの二人状態がここでも炸裂。やっぱりドラえもんは「二人で部屋で」ってパターンが個人的に一番好きだな。

更に波状攻撃の頂点であり、お約束中のお約束であるコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑またまた、二人のポーズと表情が素晴らしい。湯気が出るだけでコレもんですからね。ドラえもん達人の域にあると言って良い「3」口。F氏ってどうしてこうも面白いんでしょうか。

これに対して

「近くにおんせんがわいたんだ。」

「大はっ見だ!」

と、凄まじい論理の飛躍をカマして小躍りするのび&ドラ。何故即「温泉?」普段なら冷静なドラも二人きりだと、すこぶるのび太の毒気にあてられてイカす状態になるのがいいですねえ。

もうこうなったら止まらないのはいつものことで、問答無用に変化球無しのコレ

 『ドラえもん』てんとう虫コミックス12巻(小学館)より引用

↑わはははははは。完全に狂ってますよ。特にドラ。「さっそくはいろう。」は言えない。もう釣りの要素バケツ一つだけじゃんかあ。釣り願望が、温泉願望にまで発展する展開も凄まじいモンがありますが、のび太の素っ裸描写って、服もパンツも空中にあるってところが、ルパん三世真っ青ですね。何気にトランクス穿いてるし。大人ですねのび太。

でも、再三言うがメガネ外そう。

ザブンの擬音も何気にポイント高し。

で、オチは当然「しずちゃんのお風呂だった」なんですが、子どもの頃から「のび太たちの視覚感覚はどうなるんだろう?」って疑問がずっと頭から離れない、別のベクトルで印象深いオチでした。

入った瞬間、パって周りの景色が変わるんですかね。コマで割られると違和感は無いんですが、没入しまくってるんで、「え?」って感じだったんですよねえ。

一度お湯の中に潜ってから頭を出すとしずちゃんのお風呂だったっていう描写があれば、生理的に納得できるんですよ。でも次のコマでいきなりしずちゃんのお風呂に入ってんですよ二人。しかもドラえもん仰天してるし。はははは。

しずちゃん側では、二人がいきなりお風呂に飛び込んできたような感じなんでしょうかね。

まあ、そんな小難しい理屈はどうでもいいんですが、その後どうなったんだろうって心配も含めて気になるオチの一つですね(この「気になるオチ」ってのもドラは多い)

と言うわけで、1コマも油断できず笑えるこの話も含めて、12巻ときたらまだまだ個人的に大好きな話が多いです。

 

【追記】

こちらのエピソードはやはり冒頭にも書いたとおり「テレ朝アニメ版のパイロット」として作られてということで有名ですよね。

とは言えパイロット版ということもあり、本放送では一回だけ放送されたそうで、わたしは永らく観たことがありませんでした。

また地元の広島では放送時間が変則的だった記憶があり、アニメ自体もキチンと観ていたわけでもないんですね。

で、そちらのアニメは「ぼくドラえもん」という雑誌の付録としてDVDに収録されましたので、本編自体を観たのはかなり大人になってからでした。

大山のぶ代さんと小原乃梨子さんの初アフレコ作品というわけですから、まあなんというか朗らかな作品でしたよw

 

ではでは。

 

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書いた人

ビューティー・デヴァイセス(元ミラー貝入)

映画や漫画やゲームが大好きです。 [詳細]