変ドラ梅雨の白けスペシャル SIRA白ドラDORA 「本当に白けた、ドラえもんたち」
1.子供の頃から面白かったが、読み返すとやっぱり面白かったモノの紹介。 の二軸が基本になっている。 F氏は凄い作家なので、様々な引き出しを持っている訳ですが、ドラえもんはライフワークだけあって、その様々な引き出しからあらゆる技法を持ってきてたたき込んでいます。 曰く「ペンペン草も生えない程」にやり尽くしたいというのはF氏の言です。 なので、上記の「2」の様に、大人になってから読み直すと、子供の頃は全然意識していなかった、隠れた面白さも結構目に付きます。 それは、よく自分が書いている「油断」であったり、「異色魂」だったりしますが、中にはどうしても「これはどういう意図なんだよ?」と疑問過ぎる描写もあって、その辺りが逆に妙に笑ってしまうのです。 恐らくF氏の潜在的なニヒリズムが露呈してしまった結果なのか、F氏の素の部分が思わず作品の中に出てしまったのか? どれももう藪の中ですが、取りあえず、意味不明に、物語の演出とはまるっきり関係なく、登場人物が白けてるんですよ。 今回資料を整理しながらも、「こんなもの特集してどうすんだ?」と、我ながらその白けブリが影響してしまうほどでした(実際、旨ドラの特集の時、実はこの特集をするつもりだったのですが、急きょ企画変更したほどです)。 でまあ、今回本当は別の特集をするつもりだったんですが、どうしても(いや、あまりにも)、その白け方が面白かったもので、やっぱり特集としてUPしようと考えました。 と言うわけで、お送りします。 「白けズム〜白ドラの世界〜」
先ずは、高度な「月賦」と言うシステムを分かりやすく、かつその陥りやすい欠点まで描ききった傑作「してない貯金を使う法」からコレ ↑プラモが欲しい。今欲しい。でも今は金がない。だったらどうする? と言うそのものズバリの欲望(ホント金がらみの話は面白いのが多いですね)を、タイムマシンを使った「前借り」で、解決しようとしたのび太だが、そうは問屋がおろさずにこのオチになるわけです。 が、今回注目すべきはそんな事ではなくて、もうお分かりのコレ ↑何故、それほどに白けきっているのか。と言う事です。 この白け顔だけでも充分堪能できるんですが、付け加えると。パパに散々「そんな安直な方法はイカン」と言われて、ドラえもんも保護者役として一応とめたりするんですが、何のことはない結局大喜びで買ってきたプラモをのび太と一緒に作るんですよ。 「何一人ですましてんだ!」 と言うことです。 全然ドラえもんを責めるでもないのび太が、やっぱりいい人というかお人好しというか…… まあ、もう今回の特集は呑み込めたと思いますので、続いてコレ
↑もう石ころ帽子脱げてるっての。 名作「石ころぼうし」のオチなんですが、これも「どくさいスイッチ」と並ぶ、高度な啓蒙話なんですが、勿論注目すべきはそんな事ではないんです。今回の特集は。 みんなから石ころのように無視され続けるのび太は、やっと汗と水でふやけた帽子が脱げて、パパ、ママに構われて苦笑気味。 が、ドラえもんときたら…… 帽子なんてかぶって無くても、ホントはワザと無視してたんじゃないの? と言いたくなるほどの白けっぷり。 こんなの言っちゃなんですけど、演出ミスじゃないんでしょうか? ここは気にかけられて嬉しい場面なんですよ。パパママの反応は至極的確です。でもドラが何でここで無視カマしているのかは永遠の謎ですな。 コレもそうとうです。 ↑これまた名作「くろうみそ」(白けズムは名作に多い?)の、有名な「2ページ」に渡るパパの大説教の後、全開に(こんな凄い顔で悟るのび太も相当だけど)、しかし安直に、悟ったのび太の場面。ところがドラは…… ↑知ったこっちゃ無いようです。そんな顔で観てやるなよ。 まあ、長いつきあいですし、のび太の悟り癖には何時も辟易させられているドラえもんですから、もっともなんでしょうけど。 他にもやっぱり名作の「テストにアンキパン」なんて、扉絵からしてこの白けっぷり。
↑本編ではやかんもって馬乗りの、アンキパンをのび太に強制する様が圧巻の面白さなんですが、こちらの扉絵では巨大なアンキパン(でか過ぎるっての)を押し込んでるドラが、やっている事とは裏腹の白け加減。もっとこう、なんかさ、ないのかね。 でもF氏ってホント漫画の天才ですよね。 巻末によくあった1コマ漫画も爆笑だし、1コマだけでも充分笑っちゃいますモンね。 しかし、この扉絵は間違いだろう。
↑のび太のズボンのガラも微妙に面白いし、投げられているドラえもんも、打って変わって真面目なボケ面。 だが、勿論ここで笑うべきポイントはコレ ↑飛ばされているのにコレ。あさっての方向見ちゃってます。集中線も加えていい味醸しだし過ぎ。 なんか、「もう脇役なんだから俺、どうでもいいじゃん」状態極まれりって感じ。 まだまだこんなモンじゃなくて、どいつもこいつも結構白けてるんです。 ↑オチの後の1コマからです。「ハリ千本ノマス」でのび太の家に放火未遂するしずちゃんがオチなんですが、それから結局ドラえもんに火を。どういうんだそれ。 ↑だから、罪の意識を持て。と。やりっぱなしですハイ。頭かいているのび太はまだ救いようがあるけど(意味不明だけど)。しずちゃんってばオチではかなりの表情で野比家に向かっているだけに、転じてこの白けっぷりはかなりのモンです。 未来の夫婦なんですが、ドラえもんはその時も居るんでしょうかね。鬼嫁ってワイドショー的な雰囲気。 同じパターンでコレも相当笑える。 ↑名作(ホント名作ばっかりだな)「のろのろじたばた」の扉絵。大慌てのドラえもんですが…… ↑のび太……。 ポイント高過ぎますねえ。こののび太のほったらかし感。ホントF氏はなんでここでのび太をこれほどほったらかしにしてんですかね。漫画は全部自分の手になる訳ですから、偶然の入り込む余地が無いだけに謎です。 まあ、どんな挙動をしてろと問われても答えに窮しますが。 そう言う意味ではベスト白けっぷりかも。 のび太はまだまだポイント高いのがあって。 ↑他にもあるんだけど、ドラえもんってのび太の為に道具を出しているんですよね。だったら、もっと喜べ。と。 ↑なんですコレ? これだけ無表情なのもある意味潔さすら感じますが、ドラえもんに怒られるぞ。また集中線が逆効果だしまくりです。 というよりもですね、だったらこのコマにのび太を入れなきゃ良いと思うんですよ。「つけかえてぶくろ」の時もしかりですが。 なんかガロみたいなムードすら感じさせる、虚無感溢れてきた今回の特集ですが、まだまだコレがあってですね。 ↑ペコペコバッタで町中が罪の意識に呵まされる、性悪説を描ききった(?)コレですが、スネ夫たちが泣き叫ぶのはいいとして、ドラ&のびときたら。 ↑のび太は若干罪の意識があるかな。まあ、道具の為とは言え、結局は自らの罪に因っている訳ですからこの話のキモは。ただ、ドラは微塵も感じてませんね。罪の意識を。冷酷な優等生ブリが強烈に白けてます。 ドラえもんの自覚症状のなさはまだあって、 ↑ほら「3」口ですよ、また。友達をまっぷたつにしておいてコレ。「のりがあるから」としゃあしゃあと言うぐらいですから、別に良いんですけど、のび太をこんなに仰天(そりゃそうだ)させておいてこの表情はないですな。 ここまで来るとコレらの白け描写もやはりF氏の突出したギャグセンスかも。と思い始める訳です。 コレなんかかなりレベルの高い白けブリが、強烈に笑いの間になっていますし。 ↑名作(そればっか)「タタミの田んぼ」からのこの白け。全編に渡って「部屋モノ」ネタ(近日特集予定)の素晴らしさが堪能できる名編なんですが、中古なので雨が降らない道具に、大慌てでバケツを捜してきたドラ&のびが、部屋に戻ってきてイキナリこの気を付けでの白けブリ。 もう、間がたまらなく爆笑なんですが、部屋の中に稲が生い茂り、その上に雨雲がザアザア雨を降らせているだけでもシュールで笑えるのに、ふたりのあまりのキョトンぶりが大爆笑。 これって最も個人的に好きな種類の笑いなんですよね。 なんていうんでしょう。絶対無というんでしょうか。表情とか感情がまるっきり無意味に無い。 ドラえもんは意図的に白けている時もあるんですが、主にのび太に対してつっけんどんに接するときがソレ。 ↑数多くの「痛恨の一言」の中でも、その突き放し方や、メンタルな部分までつららで貫くような冷徹な一言。 のび太が自分の嫁さんについてあれこれ勝手に夢想して、一人で喜ぶと言う、現実世界でも多々お目にかかる、ぬるま湯のような状況にある人間に対して、これだけの表情で言い切ってしまうんですから、ドラえもんも相当の奴です(知ってますけどね。とっくに)。友達無くすぞ。
↑バットがねえ……。目も微妙に泳いじゃってますし。 かなり絶句モンですが、この「出てくる出てくるお年玉」と言う話は、こう、微妙な爆笑エッセンスに満ちあふれているんですよ。勿論また「金がらみ」ですけどね。 「ごほうび型」「なぐさめ型」「せつやく型」と言う三種類のお年玉袋が道具で、読んで字のごとしの事をすれば、それに応じて金が出ると言う代物。 で、「なぐさめ型」が相当キていて、痛い目に遭えば遭うほどお金がもらえる。「保険金詐欺」の様なシステムですが、本編ではドラえもんがイキナリ巨大なハンマーを持ち出してのび太を殴りつけるんです。 「いままでの最高記録が千二百八十四円なんだ」とかにこやかに言ってるんですが、材質が明らかに鉄。 まあ、その予兆として、扉絵でドラえもんがバットを持っているわけです。 それにしてもビジュアル的にあまりにも凶悪というか、現代的な「病める若者」「キれる若者」とかを連想させてなお、あまりある恐怖に満ちてますねこの白けぶりは。
↑うわあ…… ただ事じゃない表情です。この白けブリというか捨て鉢加減がもう。 「あんなもの(びっくり箱)をこわがるのは、きみぐらいのもんだよ。」 と、容赦なさ過ぎの一言を言い捨るだけならまだしも、あぐらのび(お約束)を見るこの 目!口!表情!姿勢! 究極なんじゃないでしょうか。ドラえもんの数多い白け方の中では。 のび太が背中を向けていてホントに幸せですよ。 こんなモノまともに見た日には、絶対に「未来に帰れ」、ですな。 二人の永遠の蜜月に対して、作者自身の激烈な意見が見て取れなくもないんですが、まあそれほどうがった見方をしてもね。(何だか書いている方も痛々しいぐらいドラえもんの表情がキツくて)
さあ、いかがだったでしょうか。今回の特集。 「こんなのドラえもんじゃないやい!」 なんて、このページを見に来ている方は白々しくて言えないと思いますが、集めてみるとあまりの白けぶりに、筆者自身あらためて 「なんでこんなもんわざわざ特集してんだろう……」 と言う気になることしきりです。 でも笑えて笑えて仕方がなかったんですよ。読み直す度に何だか気になって気になって。 なんだか吐き出した後のような気分さっぱりな気持ちなんですが、読んでいる人はまさに 「なんだ、こりゃ?」 と言う気分だと思います。
もっとも、その気持ちこそ、このサイトに相応しいとは思いますが。 ではでは。 |
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