変ドラ第六回 「ねむれぬ夜に砂男」 てんとう虫版18巻より 今回の話はかなり知名度が低いと思います。 実際地味な話で、コレと言った特徴もなく有名な道具が出てくるわけでもありません。 あらすじとしては、 「昼寝のしすぎで寝付けなくなったのび太が、夜の町を散歩して、空き地で不眠症の男の人と出会う。そこで、心配になって駆けつけたドラえもんと一緒にあの手この手でその人を眠らせてあげようと奮闘する」 これだけの話です。 個人的に登場人物が少なかったり(できればのび太とドラえもんだけとか)、舞台が異様に限定されている(主にのび太の部屋)話が好きなのだが、今回はそれに加えて、先の「不眠症の男」の人がすこぶる異例なキャラなので好きなのです。 普通はのび太を眠らせようとあの手この手ってのがパターンなのに、何故にわざわざ脇役を一人登場させるのかは、前代未聞のオチのためなのですが・・・それは置いておくとして。 それでは進めましょう。 先ず今更書くのも何なんですが、ドラえもんのコレ
↑嘲りきってます。「プーッ」もいい感じで、モロにのび太の事を嘲笑していて笑えます。まあ、0.93秒で眠れてしまう程ののび太が眠れないなんてのは笑っちゃいますが。それにしてもここまで小馬鹿にしなくても。開いた左目が丸点になっているのがポイント。 「そんないいかたあるか!」 とさすがののび太も怒りますが、 「もの思いにふけって」 ってのはいささからしくないというか、無理がある。 案の定 「おやすみ」 とドラえもんに見放されるのび太が 「なんてはくじょうなやつだ!」 って毒づくあたりが、変に二人のドライな雰囲気をあらわしていて結構好きです。(倦怠期?) それにしても、のび太が夜に何かしようと約束しておきながら、ドラえもんに起こされて「なんでこんな夜中に・・・」云々という、かなりお約束の展開があるだけに、ここのドラえもんの反応は仕返しなのかもしれないですね。 でも 「こんなになやんでいるのに!」 って憤慨するのび太ですが、たいして悩んでないと思うんですが・・・ どうせねむれないならと、夜の散歩に出かけるのび太は、F氏のいい感じの風景の中を散策します。 で、例の空き地にたどり着き、土管に腰掛けて物思いにふけようとするんですが、この時のコレ ↑小学4年生ですよのび太。(初出は小学五年生なので、厳密には5年生なのかな)にしては、かなり高度なこと悩んでますよね。「はたすべき役わりとか・・・」ってのが好きなんですよ。お題目だけ凄くて結局空回りするわけですが、問題提起の視点の高さは素晴らしいです。国際情勢の動きってのも実に良い。 そこでいよいよ「不眠症の男」(勿論名称なんて無い)の人と出会うわけです。ここで。 その時の後ろ手に握り拳で意見に同調するのび太の、「その気」ブリが実に変でいいんですよ。 「わかるよ、そのつらさ。」 っておじさんに向かって。 目の感じもかなりランランとしていて、なんだか全共闘世代な雰囲気がでていて、その気過ぎますのび太。 でも題目は「眠れない」だけ。 それでドラえもんが唐突に登場。まあご都合的ですが、心配してきたドラえもんに乾杯です。(だったらあんなに嘲んなきゃいいのに) のび太の判ってる台詞 「いいところへ」 も実にご都合主義と割り切っていて素晴らしい。 ここからドラえもんが「眠らせる」タメの道具をあれこれだすんだけど、これが笑える。 先ず、 「さいみん機」 あまりにもそのまんま過ぎなネーミングと、デザインがしびれるほど笑えるんだけど、加えてこの道具の爆笑さはコレ ↑さいみんガス!! ドラえもんの「さいみん音楽も効果をそえるよ」の「よ」っていいですよね。ドラえもんがよく道具の説明を加える時の言い回しなんですけど、「よ」って何だかいいんですよ。その前の「目をはなさないで」って命令調もよくある言い回し。でも「さいみんガス」って凄い。クルクルって擬音も変。 なのに、不眠症の男は一言 「ぜんぜん。」(どはははは) それにたいして仰天するのび太も変で、こんな道具この時はじめて見たに決まってるのに! その効力に対して全幅の信頼をよせているんでしょうね。 返す刀で 「ぜんぜん!?」(オウム返し!!) って。 ドラえもんも吃驚してるし。そんなに凄い道具なのかコレ。 ここのやり取り最高すぎます。 そして、「よおし!」と舌だしてのとっておきが何と 「羊とび式さいみん機」 ネーミング良すぎ。 デザインも木のうろから子羊が囲いを越えて納屋に進むと言う、素晴らしすぎるコンセプト。 羊を数えさせて眠らせるって、この道具横になりながらでは絶対に役に立たない所が凄い。この状況でのみ許させるデザインが最高に笑える。 「これならうまくいきそうだ」 と得意満面の笑みを浮かべるドラえもんと腕組んで微笑むのび太も抜群に変世界へ突入。 で、コレ
↑13563!数えすぎ。万桁まで数えちゃってます。三桁の飛んでる羊がもうなんていうんでしょう、バックのベタと相まって腹の変なところで笑えるというか。あの数字って一回一秒としても3時間近く数えてますよこの人たち。あのドラえもんのとぼけきった顔と「3」口がキてます。二人とも後ろで腕組んじゃってますし。 それでも更に目がさえてしまった「不眠症の男」に、ドラえもんがいよいよ最終兵器として取り出すのがコレ。 ↑わはははははは。この顔! ばかでかい袋もセンス抜群。「さいみん機」ってちゃんと付いてる道具名にこだわりがあり過ぎて大好き。それにしても「砂男式」の「式」って何だよ。ネーミングのまんま過ぎる道具を取り出して「これはどうだ!」ってドラえもんの台詞もまた格別。 「死んだ人さえねむらせる」(うお!最高!)と言う「強力さいみん砂」をかけてくれる道具なんですが、説明するときの真顔のドラと、その横で腰に手をあてて「それはすばらしいねえ」と言わんばかりの自信ありげなのび太も相変わらず「その気節」炸裂していて面白い。 段々変な気分になってきたでしょ? クスクスって感じの妙な笑いのさじ加減。 「それいけ!!」と言う調子のいいドラえもんの合図で、砂を実際にぶっかける「砂男式さいみん機」なんですが、なんとコレも 「ぜえんぜん。」(面白すぎ) 効かない! ↑吹き出しとげとげ過ぎ。「あるはずがない!!」と!が二つもある、F氏にしては強調しすぎのネーム。「こ、こんな」ってのも驚きすぎだろドラえもん。「はずがない!!」とまで言う。そりゃ「死んだ人さえねむらせる」(ホントに何なんだよソレ)さいみん砂をモノともしない「不眠症の男」に読者も仰天。ドラの顔のコマ切り加減が、絶妙に吃驚感があって素晴らしい。 でもコレはないでしょ。 ↑もっともっと!!! わははははは。量の問題らしいです。意地になるドラえもんが変だ。 もっともっと! かけられまくった「不眠症の男」は生き埋めになりかかるというハードな展開の末に、急転直下のオチが訪れる。 介護の人(?)が突然現れて、実は彼が 「ねむれなくて困っているゆめをみながら」 歩き回っている夢遊病患者だったという度肝抜くオチ! 驚天動地!! 子供の頃にホントに膝を打ちましたモン。 そりゃあ効かないよって。ははははは。 前にも書きましたが、F氏は落語好き。コレもそれ系の話として完成されていますよね。 でも、ここで取り上げたような道具のシュールさと言えばいいのか何なのか、子供の頃に感じて、読み直してもなお形容が難しいお笑い感覚が宿っている逸品と言えると思うんですよね。 映画「家族ゲーム」を見ているときの唯一無二の感覚に似ている、ってのは大袈裟すぎます?
今回取り上げながらも、制作途中まで「コレ面白いのか?」って半笑い状態だったのですが、いやいやヤッパリ流石F氏ですね。その半笑い感覚がボクとしてかなりのヒットでした。 読み直すとホント変という、この変ドラのコンセプト通りの逸品ですなコレは。
ではでは。 |