●不定期コラム怨み念法帳●
(変ドラあらかじめ雑記抜粋版)
邂逅の章 この間ブックオフで「魔太郎がくる!!」の文庫版1巻を購入しました。 それが あまりにも面白かったので、書かせていただきます。 先ず魔太郎が来ているシャツの柄が強烈で、なんと薔薇柄! いじめてくれと服来て歩いているわけですよ。要するに。(まあ、ご丁寧に文庫版の表紙からして、魔太郎って薔薇背負ってんですけどね…あ、あれホントに薔薇か? と植物知識のなさを露呈) ところが、そういう所よりも何よりも、もっととんでもない所があったので、 「こりゃああ、なんなの?」 と、一体全体度がこれほど高いコマと科白を観たことが無かったので、電車の中でしばし唖然としました。そして爆笑(を堪えた)。 それがコレ ↑ネズミに指さして力説ですよ。日本男子バレーを例に出すのも猛烈ですけど、延々と時間差攻撃の仕組みとその効果についての蘊蓄を爆発させてます。ねずみに。 ちなみにねずみの名前は、片目なので「さぜん」ですって。ぬううう。 その後も、事あるごとにさぜんに対して 「おまえの目つぶしクイック攻撃にかかっちゃ」とか「その目つぶしクイック攻撃でやっつけよう!」 と連発。ねずみに。 映画「ウィラード」も真っ青の展開で、ねずみまみれの話なんですが、いやあ、鼠の大群が夜中にゴミ収集所に山から群がり降りてくる光景を目の当たりにした人間としては身の毛がよだちましたけどね。 Aクイック、Bクイック しかし、魔太郎はヤバそうです。かなり。 オチの適当加減も半端じゃなく凄くて、微妙すぎる感覚と感情が常に読後感につきまとってたまりません。 「おわってねええ」「おちてねええ」 の連続。 逆恨みなんて序の口で、勝手に嫉妬したり僻んだりでも「ウ・ラ・ミ」ますからねえ。凄い面白さでした。 しかもとどめが、魔太郎にそっくりのヤナ奴(はははは)の名前が、なんと 日上!! ホント外さないですよA先生も。 続きが楽しみだなあ。 ではでは。 おまけ 「必殺砕石げり!!」(なんだ、そりゃ) |
切人登場 先日に引き続いて「魔太郎がくる!!」の2巻を、新刊書店で購入。定価で買って仕舞うところに自分の中でランクアップを感じる。(その前に小一時間かけて中古書店を探したが見つからなかったことは、この際秘密にしておこう) で、またまた凄まじくスパークしているんですなああ。 先ずそろそろ出始めたマニア系ネタが連発。切手マニアからモデルガンマニアまで。それぞれの名前が取りあえずイカします。 切手博士の「間似谷(まにや)」くん。 まあ、基本的な所ですよね。はははは。こいつが魔太郎がおじさんから貰って貴重な切手を価値を知らない魔太郎から安上がりに奪っちゃう。 でも、魔太郎「やっぱり返してくれ」は通らんだろう。そりゃ無茶だ。 まあそれでも魔太郎は逆ギレで「うらみ念法 切手たつまき」(なんだよ、それ) で、次が銃マニアのその名も「呉次」。しかも苗字が「巌」! かっこいい! ガンクレイジーっすね。 でも、この人魔太郎と心を通わせて、潔い生き方をしてくれるので、珍しく良いキャラなんですよね。泣ける。A先生さすがにマニアへの愛がしっかりしています。ははははは。 しかし魔太郎の変節はまだまだ炸裂が止まらないんですね。それがコレ ↑ママお手製のチョッキを着てご満悦のポーズ。まあ、これはその後魔太郎がファッション・モデルになる(異常)の伏線なんですが…ママの科白が極めて具体的なのが素晴らしい。 コレ見て直ぐにちびまる子ちゃんを思い出しましたよ。ながれている血は同じ血液型だと思いますねこの二つの漫画は。 そして、あ! っと驚いたのがコレ ↑その名も切人と言う「おそろしいチビ」(by魔太郎)。こいつときたら度の過ぎたイタズラばかり無意味にしまくって、魔太郎も怒り心頭になるが、何と魔太郎が負けてしまうと言う進退窮まっている爆笑譚でした。 「この次はきっと おまえを降参させてやるからな!」 と闘志を燃やす満賀…じゃない魔太郎が笑えます。降参って… 「ふ、腹話術か!!」 と、見当違いの所で仰天する部分も何気に見逃せないポイント。 もっとも、ドラえもん読者にとって非常に気になるのはコレとの類似じゃないでしょうか。 ↑「かならず当たる手相セット」(だから、もうそれは相じゃないだろう)から、かなり狂った珍しい(ドラの中では)ガキである、キイちゃんだ。 可愛らしい顔してやることが凄まじいと言う点で、実は直球の切人よりも性悪なのだが、それにしてもコレは恐い。 ↑身の丈もある包丁を持って無表情に迫るキイちゃんは恐怖そのもの。のび太もロープでがんじがらめというのも極めて恐いシチュエーションだ。 とにかく作風は違えど、根底に流れるモチーフは割と共通しているA先生とF先生ですが、やはり長いこと一緒に居ると、同じ様ないやな体験して居るんでしょうなあ。 ところで、最近すばるさんがハマっている「Papa told me」も読んでいるのですが、こちらも緻密な人間描写と、バリエーション豊かに共感する話を散りばめられた傑作なんですよ。これと「魔太郎」を同時に読むことで、自分の中のバランス感覚を磨いている今日この頃。 ではでは。 |
食い物の怨み 恒例の「魔太郎がくる!!」もいよいよ3巻まで進みました。 もう読んでいる方はご存じなんでしょうが、子どもの頃受けた印象は当然根深く残っているとは言え、今読みむと完全にA汁がジュンジュン染みわたった傑作ですな。 今回も「おいおい、そりゃお門違いだろ!!」としか言いようのない恨み節連発だったんですが、中でも「なんだ、こりゃ?」の極めつけとも言えるネタが、うらみの23番「食いもののウラミはこわいよ!」 一人で留守番する魔太郎だが、そこへ空き巣が入ってきて魔太郎が楽しみにしていたコップヌードル(A先生も負けてないですねえ)を平らげた挙げ句に、金の在処を吐かせようと出前を大量にとらせて、魔太郎にだけ食べさせないと言う、尋常などという次元では無い異常な話。 ↑まあ、そりゃうらんでもいいけどさあ。 この話、オチも凄すぎるんで、是非一読。(取りあえず空き巣のデザインが既に相当…) |
ハード版への道 遂にというか何というか、衝動を抑えきれなくなったのと良い出物だと思ったので、yahooオークションで「魔太郎がくる!!」の旧版を全巻落札してしまいました。文庫で全巻買うのとプラスアルファちょっとと思えば何とか許容の値段だったので。 状態はかなり悪そうですが、元々そういう本が好きなのと、何より読みたかったので到着が楽しみです。ふふふふふふ。 これで文庫版三冊だけとは言えどういう修正がされているのかちょっとは分かるというモノですな。楽しみです。 |
怪奇コミックス「魔太郎がくる!!」 瀬名秀明の新刊「八月の博物館」をすばるさんが初めてオンラインショッピングを利用して購入したのですが、昨日書店には並んでいたのに、思いっきり今日到着しました。 まだ二人とも読んでいないのですが、F先生のテイストを意識しているという事をどこかで言っていたので、とくと拝見するつもりです(ちょっとディオ調)。 でまあ、そんな軽い話で前振りしつつ、本題にはいるわけですが、遂に到着しましたよ、例のブツ 秋田チャンピオンコミックス が! 取りあえず3巻まで一気に貪り読んだのですが(一度に読むのは勿体ない。ふふふふ)、ヤバ過ぎですッス。はい。 そりゃ直すよなと言う、いわゆる「差別的表現」もあるにはあるのですが、ホントに現在の版が「ソフト版」と称しているのが納得しきりの「ハード版」。 取りあえず未収録(文庫全部読んでないので、後で収録されているのかもしれないんですが)がやたらとあって、話自体を初めて読むモノも多く、それだけでもかなり楽しめるのですが、取りあえず現在のソフト版で直されている部分は興味深いですね。 「ねじれた心にはねじれた顔」 なんて、ソフト版は教室のドアに挟まれた物が落ちてくるイタズラが、墨汁なんですが(これはこれでシュールですが)、ハード版ときたら「ハサミ」ですからね。グサって。 おそらく本当にこういうイタズラをしたら危ないという配慮なんでしょうが、単純にハード版はハサミが良く登場しますし、やたらと危ない器具を魔太郎やイジメッ子が駆使してきます。いやあ、デンジャー。 しかもソフト版では、イジメ返して溜飲を下げるってのがパターンになっていますが、ハード版は違いますよぉ。取りあえず 殺し ますからねえ。 しかも初期なんてたまに「うらみ念法!」なんてやってますが、殆ど自力で殺してますよ魔太郎。まあ、そうでなきゃウラミなんて晴れやしないんですけどね。 この自力で創意工夫を懲らして殺しまくるハード中学生魔太郎の魅力はソフト版にはまるで無くなっていますよねえ。是非はともかく。 「う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」 なんて言うぐらい恨むんだから、まあ相手を殺すぐらいのことはして当然ですけどね。途中からすっかり決め科白的な雰囲気があって、ある種ヒーローモノ的なムードが漂うし、魔太郎があんまりいじけ無いんですよね。そういう意味では真に良くできた漫画ではあるようです。 もっとも、こんぐらいしてくれるとカタルシスがあるのも事実ですが。 ↑金属バットや、「げす!」と言う凄まじい科白と相まって効果的なのは、やはり魔太郎の上目遣いですな。これでこそ魔太郎。罪の意識がないのが最高というか、基本的に「やって何が悪い」を貫いてますからね。この精神は実に素晴らしいです。それにしてもタイトルが「ゴミはふくろにしまつしよう」って壮絶だ。 この場面は前振りも最高で、魔太郎がいきなりゴミ袋に入って出迎えるは、挙げ句にもうろうとした目つきで「あーイー気分だ…」と快感フレーズ。加えて素晴らしいのが、それをみたヒッピーがたまらず 「おおい! おれにちょっとはいらせてみろ!」 と大興奮! 無茶苦茶面白いッス。 バットを振り下ろしながらの魔太郎の科白 「そうだ!! おまえはゴミだ!! ウジムシだ!!」 ってのももの凄い爽快感です。 さて、一部が描き直されていたり、削除されていたり、話自体が削除された話の他に、今まで読んだ中で強烈にビックリしたのが、前回こちらに書いたお馴染み「切人」(これ、オリジナルだとルビが違って「きりひと」ちゃんなんですよ。えええ)の初登場話。 取りあえずコレが総てです。 ↑ひええええええええ!! 眼黒です。イヤになるほど極悪ですねええ。後のキャラクターとの接点ゼロ。かわいげのなさは古今随一でしょう。というよりも、本気でホラー漫画なんですねえ、魔太郎って感じ。 ちょっと対照実験。 ↑うおおおおお!! これは恐い! 恐すぎる!! この違いはA先生とF先生ぐらいの違和感。(それは違う) にしてもコレはあまりにも… こういうのを描き直しって言うんでしょうねえ。 で、話自体も全然違うんですよコレが。切人が来て、イタズラ三昧で魔太郎が散々な目に遭うと言うプロットは同じなんですが、その散々ブリがハード過ぎ。 いきなり「噛みつき口激」からヤってくれますから。 口から血を滴らせてニヤつく切人の凄惨さも凄かったんですが、こいつときたらタダのお隣さんの子どもってな設定だけでコレだけやらかすあたり、ソフトだろうがハードだろうが笑えます。 ここでもハサミで魔太郎を何度も殺そうとしますし(くれぐれも繰り返しますが、本気で殺しにかかってますからね)、挙げ句にストーブの灯油にマッチ導火線で火を点けようとまでします。お前も死ぬっての。 お約束の 「オッソロシイチビだ」(何故カタカナ!? それはA先生だから) から始まって、 「いくらチビでももうゆるすわけにはいかないぞ!!」 と最高の科白連発。 ここまでやっておきながら、オリジナルも結局魔太郎がウラミを返すどころじゃなくなって終わりになるのが大爆笑。 しかも科白が 「まいった! まいった!」 わははははは。 ソフト版はあきらかに切人に仲間意識芽生えてるっぽく描かれているので、見逃してやる的な雰囲気があるんですが(それも充分変ですが)、こっちときたらどう考えてもページ数が無くなったからとしか思えない程唐突に終わるのが、輪をかけて笑えるんですね。 表紙と言い中身と言い、まったく良い買い物をしましたよ。しかもまだ10冊も残っているんですからたまらんです。全部読んだらソフト版まで全部買い揃えてしまいそうで恐いです。 あと、どうでもいいんですけど、やっぱりチャンピオン・コミックスは読み終わったときの、他の漫画の紹介部分が薄気味悪いです。 昔から気になって仕方がなかったのが 「泣くな!十円」(つのだじろう) 爆笑コミックらしいんですが、嘘つけ。 ジョージ秋山の 「ゴミムシくん」 もタイトルだけで言うまでもなく凄いし。 「番長惑星」 も子どもの頃から意味不明に恐そうでした。番長惑星なのに。石森章太郎なのに。 とにかく秋田チャンピオン・コミックスってどっかおかしいですよ。絶対に。 ではでは。 *これを書いた後にオリジナル版の3巻を読み終わったのだが、なんとその最後に「切人」の話のソフト版だと思っていた話が収録されていた。つまり、ソフト版だと初登場の話のように描かれていたが、あれは続編だったのだ。タイトルもなんと「悪魔のようなチビがまたきた」である。ちょっと先まで読んでから書けばこんな恥をかかずに済んだというのに…メラメラメラメラ〜。こ・の・は・じ・わ・す・れ・ず・に・お・く・べ・き・か… |
WAY OF THE MATAROU 今回自分の中で強烈な想い出になっている原体験、11巻まで読みました。(ああ、あと2冊で終わっちゃうよ…サビチイ) 話としては「魔太郎ひとり旅シリーズ」が連作であったりして、これまた猛烈な面白さだった訳ですが、ひとり旅に出すという無茶苦茶な流れも笑えますが、そこでの魔太郎ファッションの炸裂ブリが絶品。 とくとご覧アレ ↑ウェスタン・ハットが黒かったりして、実にイカしたファッションです。今回その手のネタも炸裂していたので後述しますが、魔太郎は学生服以外のファッションが何気にキていて素晴らしいです。勿論車掌のデフォルメするつもりゼロの不気味ブリも必見ですが。 それにしても「一人旅シリーズ」は面白いですよ。 とにかくろくな目に遭わなくて。ははははは。 出発シーンなんかも、ヒロインの由紀子さんに会うと未練が残ると言って、電柱の陰に隠れたりするんですが、それがもう「バレるって」&「恐いよ魔太郎」感が凄いです。文庫にあればいいんですが、確認してません。(あれば是非読んでみて下さい) ところで10巻の装丁が、あまりにも凄かったので観て下さい。 ↑良い味だし過ぎッス。これぞ! って感じで素晴らしい。●怪奇コミックス●の名に恥じない表紙ですよね。 で、も、 この表紙を開いた途端に、信じられない様な中表紙が! それがコレ!! ↑うらみ念法! ギャラクティカ・マタロー DGOOOOOOOOON!! 最高ですよ、最高。 本気で電車の中で失禁しそうになるぐらい爆笑を堪えましたよ。 こんなダブル攻撃があろうとは夢にも思わなかったです。A先生とことん抜かりないですねえ。長期連載で一世風靡するやいなやコレもんですからね。挑戦的ですよハイ。 究極のネコパンチ!しかもストロー級以下でしょこりゃあ。 これだからA先生は堪えられないですよ。色んな意味で。 そして、前後しますがファッションのネタでこれまた衝撃的とも言える話が一つありました。 それぞコレ ↑またまたリー!! しかも何故かTシャツ!! それも「恐怖の」!! わはははは。 この頃って、魔太郎のママが後でツッコミをいれてしまうぐらい、リーだらけなのが、とにかく最高。 しかし絡ませるネタがとにかく無茶苦茶ですな。そして、話も全然リー負けしてない凄まじさ。 変なモンばっかりプレゼントして、魔太郎をろくな目に遭わせないおじさんから、リーの「ドラゴンシャツ」を貰った魔太郎。当然着るやいなやコレもんでスパーク ↑決まった!! 夢やぶれたとは言え一度はドラゴン予備軍だった魔太郎。スパっとポーズを決めてくれます。でも、どうみてもリーには… この話のハチャメチャブリは特筆モノで、発端からしてこのブルースぶりなもんですから、歯止めなんて全然きかなくて、完全な自己パロディ状態に陥る。中でも大爆笑なのが1ページまるまる突然出てくるコレ ↑573回!! 数々の名殴打シーンがコラージュされて圧巻。しかもドレもコレも美味しすぎる殴らればかりという念の入りよう。切人に3コマ使ってトンカチで殴られるあたりは、死に一番近い事でも忘れられない爆笑ヒット。 なんつっても見出しの両端にある拳が最高です。なんてセンスなんでしょう。 この話はドラゴンTシャツを着て、みんなに見せびらかすべく町を闊歩する魔太郎が、当然のごとく非道い目に遭う訳ですが、動機が総てTシャツに関わるのがとにかく笑えます。 先ずドラゴンシャツを取られるわ、変わりに貰ったシャツが抗争相手に勘違いされて袋叩き。曰く 「どうしてぼくって こうヒドイ目にあうんだろう…」 まあ、自業自得ですがね、この場合。 そして、お馴染み怪奇やにいってもらったシャツがすこぶるイカすコレ ↑その名も「半魚人の筋肉シャツ」…なんだ、そりゃ。良い趣味してますヨ。魔太郎も当然分かっていて、疑問無しに「ウガーッ!!」ってやってくれますしね。手つきも含めて抜群です。 満更でもない魔太郎の科白がイカしていて、曰く ↑この平常と異常の狂ったバランス感覚が魔太郎の、ひいてはこの漫画全体の面白味の一つですね。このシャツを気に入る時点で完全に世間とは切れてんですけどね。 そして、更に狂ってくるのはこの後で。このシャツすら周りが欲しがる欲しがる。そんで、ボコボコにされて奪われる始末。 こんなシャツを! いやああ、笑えます。 魔太郎ってイジメがテーマになっているだけに、「加害者と被害者」の関係や、「善行と悪行の表裏関係」なんかも結構鋭く描いている話もあるんですけど、いかんせんこういう弾けた話が魅力的すぎて、ちょっとかすんでしまうのが痛し痒しですかね。はははは。 この話にインスパイヤされて作ったのが、このコーナーです。 さてお待ちかね、次回はトラウマ話NO1 「不気味な侵略者」 を乞うご期待。 これがヤドカリ一家の総てだ!! |
不気味な侵略者 ボクは昔一冊だけ魔太郎を読んだことがあって、それを何度も何度も読んでいたようです。それはオリジナル版で言うところの11巻だったことが判明したのですが、これがもう「わすれトンカチ」でぶったたかれた様な気持ちでして、思い出す思い出す。 特に「鑑の中へ」の不思議な雰囲気は、強烈に記憶の引き出しに隠れてました。 もっとも、そんな中にあってもまるっきり忘れることが無いどころか、完全にトラウマと化して心のスペースを大きく占めていた話もあったのです。 それが今回紹介する 「不気味な侵略者」 魔太郎のパパが酔っぱらって見知らぬおじさんを家に連れて帰るのですが、そいつがガンとは文句を言えない人間心理をつつきまくって居座り続けた挙げ句に、そいつの一家までもが現れる。実はそいつらはそうやってヤドカリの様に他人の家を奪っていく連中だった。 と言う強烈な話です。 もうこれが子供心にかなりキまして、荒木飛呂彦の「魔少年B.T.」の最終回でも到底到達できない「いやああな」感じが凄いんです。 さて、今回読み直してみると、それはもう寸分違わず当時のいやな気分が甦ってくるのが兎に角お見事の一言で、A先生の「ヤナ奴描かせたらこの世でTOPクラス作家」の面目躍如。 「まんが道」の武藤を筆頭にして、本を破り捨てたくなるようなキャラは、それこそ無数に登場するのがA先生の漫画の凄いところですが、「魔太郎」と来たら作品の性質上問答無用に各話に最低限一人はヤナ奴が登場するわけです。そんなのもうノリノリなのが伝わる伝わる。 で、そんな中で一家丸ごと最悪と言うのがこの話の凄い所です。 先ず主犯格であるこいつ。 ↑いきなりビールを遠慮なくがぶ飲み。こいつのメガネとか髪型とかへの字眉毛とか、とにかく完璧に胸くそが悪くなる素晴らしいキャラクターデザイン。よく見ると毛穴の汚い鼻も相当なもんですが、A先生と来たら心身共にクソ野郎のデザインが、どいつもこいつも完璧過ぎるので、これは絶対に「モデルいるぞオイ」感が強くて、余計な心配してしまう程です。 それにしても説得力ありすぎ。 知り合いと本当の友達になれるかどうかというのは、一緒にご飯を食べるか旅行に行くと分かると言います。結婚とかそういう事を考えている相手とは、必ず一大事の前にどちらかをすると良いはずです。 そんな訳で、こいつときたら読者がうんざりするほど、あの手この手でタチの悪い食いっぷりを見せてくれるのが、かなわない。 先ず目覚めのコーヒーですらコレ ↑子どもの頃に親が「ピチャピチャ言わすな」と何度も激怒していたので、ボクもピチャピチャ言わせてモノを食べる人が大嫌いですが、それだけが理由ではないことに今気付きました。こいつの性もあったんですね、恐らく。 この満足げな表情と目の細さ、加えてカップを持つ指! 観て描いてるとしか思えない臨場感。 コーヒーで舌なめずりは異常です。こんな奴現実に身近にいたら処刑リストですけど、絶対にいそうです。いや居る。 こんな奴がやってきた浦見家の不気味な雰囲気をあらわしたこのコマも傑作 ↑このパースの付け方と構図はお見事ですねえ。こういう所でちゃんと画が描ける人は違います。 さあ、どんどんこれを読んでいる人にも嫌悪感を味あわせるタメに続けてコレ ↑なんでこんなに地に足の着いた「生きた嫌悪感」を描写するのが巧いんでしょうねえA先生は。ただ事じゃないです。数多い魔太郎クソ野郎リストの中でも相当の上位に来ること間違いなし。 他の連中もヤナ奴と言う意味では相当なんですが、あれは誇張を加えている事で、ある種別世界の者に対する嫌悪感なんですよ。漫画の中の世界だから笑ってられると言うか。ところがこいつときたら、あまりにも日常に依拠してるもんだから土足で踏みにじられるような嫌悪感ですね。 しかもまだまだこんなもんじゃない。 態度もでかく一緒にテレビを見るや、魔太郎のパパが見ているゴルフに対して、言わなくても良い難癖。まあ、こいつはこれが手段になっているのがまだ逆に言えば救いですけど、もうほんと「ああ、いるよこーゆー奴」感がずば抜けてます。 森安氏とのつき合いは無駄ではなかったんですかね…おっと。 昼飯も昼飯でコレ
↑笑顔がね、コイツの最もむかつく部分の一つなんですね。誰かが書いていたように、「描写は総て観察によって成り立つ」の極めつけです。 この、暴力でも何でもない攻撃は日常生活において究極にタチが悪いですな。なんせ悪いコトしてない訳ですし、文句つけると自分もいやな気分になるからしたくない。この人間関係の悪しきバッドゾーンをこうも描き切らなくても。 挙げ句にとどめがコレ ↑やめてくれええええええ!!! ここまでしても、恐らく現実的にはホントに追い出せないんじゃないかと思えるあたりが、この話の本当に怖い部分なのです。 通り魔と一緒で、「やられたら終わり」的な事って存在するんですよね。マナーとかそういうレベルでも大なり小なり同じ事で、自分がヤナ気分になったら、それでもう終わりな訳です。注意したりすること自体もヤナ気分な訳で。人間関係ってのは底なしの題材であることは確かです。 そしていよいよ、攻撃隊長登場。その名も暴太郎! 魔太郎は特にA先生の「そのまま」ネーミングセンスが堪能できる作品ですが、中でも群を抜いて強力なネーミングですね。苗字はまだ諦めがつくもんですが、名前でこれだけの凶暴さは類を見ないですね。 しかもコイツもコレ ↑ノオオオオオオ!! 擬音の凄まじさと相まってのこのムカツキ度。繋がった眉毛もあまりにもポイント高し!(くれぐれも言い添えますが、決して眉毛が繋がっているからムカツク訳ではないですよ。こいつがコレで眉毛が繋がっているから倍増する訳で) くらもちふさこ先生の「天然コケッコー」と言う大好きな漫画があるんですが、その中に登場する「しげさん」なるキャラが、これと同質の嫌悪感を味あわせてくれる希有なキャラです。あのキャラも本を破り捨てたくなるキャラの一人として漫画史に残すべきです。未読の方は作品自体も素直に面白いので、読まれることをお薦めします。ただ、そのキャラが出てくる話だけは正視に耐えない事は保証しますのでご注意を。(ちなみに「しげさん」も眉毛繋がってます) そしていよいよヤドカリ一家登場! ↑暴太郎曰く「本隊」だそうです。祖父母から子どもまでパーフェクトにタチ悪し。それにしてもA先生ときたらありとあらゆるムカつくキャラデザインを有していて圧巻です。背負っている子どもまで律儀に性悪なのは傑作。 もうこんなの来たらどうかしてしまいます。 男の子なんて服に「ヤドカリ」の絵をプリントしている始末。 ここまで入念というか完膚無きまでに嫌悪感を積み重ねてくれると、いよいよ魔太郎の復讐でカタルシス爆発と持ってくる凄まじい感情移入度です。 そしていよいよコレ ↑きたあああ!! これぞA節!! 4コマ使って黒バックの生首魔太郎が、that's魔太郎としか言いようのない表情で豹変していく極めつけの演出。これで盛り上がらなきゃ嘘だ。 陰も陽も盛り上げる演出法は同じ。本当に物語を盛り上げる演出を身につけた人はやっぱり強いですよ。 なのに!! ここまで盛り上げておいて、何と魔太郎ときたら「うらみ念法 まねきネコ!!」とかほざいて、例の主犯を他の人に押しつけるという、呆気にとられる方法で難を逃れる。 散々直接的手段=殺しでウラミをはらしてきた魔太郎なのに、なんとこいつら一家になんら制裁を加えぬまま、自らの家を家族を守る方法をとる。 しかし、このオチの性で、子どもの頃のボクは究極に恐怖のどん底へ突き落とされた訳です。 こいつはらまだ居る!! と。 こいつらには手の施しようがなく、現在この時も次々と他人の家を蹂躙しているんですから。これは恐かった。個人的都市伝説ナンバー1です。 玄関に「ヤドカリ一家お断り」って貼ったって駄目なわけですからね。 しかも他人ならまだしも、この手の恐怖と嫌悪感は、身内の間でも現実起こり得ると言うやるせなさ。 いやあ、本当にレッド・ゾーンですなあ、この話は。 ・・・・・・・・・ で、まだ魔太郎なんですけど、 掲示板にもあったオリジナル版4巻の表紙。 笑えます。ハッキリ言って。 コレですもん。 ↑掲示板のM6さんがおっしゃっている通り、「気の毒な人」と言う形容が、コレ以上ないほどハマる魔太郎が泣け笑い。 そして、コレ ↑コイツの表情。ド真ん中でコレですからねえ。A先生絶対確信犯ですな。確かにタダでさえ本能的な部分でイジメたくなる要素満点の魔太郎ですけど、マントとバラ模様の服を着てコレされたら、今後近づけない事は必至です。ある意味自衛手段としては最善かも。いや、学校にいられなくなるか。 |
文庫版魔太郎 今日はちょっと短めに。 とかいいつつ、魔太郎なんですけどね。 先日自分が読んでいない魔太郎の文庫版(ちなみにその書店にはボクが買った性で補充されないまま現在「魔太郎」が4巻からしかありません。池袋のサンシャイン前のアニメイトに行くときはご注意下さい)を立ち読みしてみました。 目的は、果たして何が未収録なのかと言う事だったんですが、ななんと、文庫版の方にしか収録されていない話が何編かあったんです。 具体的に一番驚いたのは、何と言っても「一人旅シリーズ」にその四があったこと。 これが修正時に書き足されたモノなのか、未収録だったモノを修正時に収録したモノなのかがわからないのですが(ご存じの方がいらっしゃったら教えていただけると嬉しいです)、印象としては「なんだ、そりゃ?」系の話が多かったので、気になるやらホッとするやらといった、非常に複雑な心境です。 こりゃやっぱりソフト版も購入しなければ行けないですね。 加えて「魔太郎が翔ぶ!!」が収録されている愛蔵版『ブラックユーモア短編集』の2巻も探さなければ。 いやまてよ、そうなると国会図書館で初出がどうなっているかも調べたい。調べるのは勿論「燃えよ! 魔太郎」と「恐怖のTシャツ」(いや、何が勿論なんだかは知らないですけどね)。「恐怖のTシャツ」の魔太郎なぐられ名場面集が、初出時にもあったのかどうかを調べたいですね。あれって広告ページの穴埋めっぽい雰囲気があるんで…まあ、たとえそうだったとしても逆に凄いんですけどね。あのセンスで穴埋めってのは。 ・・・・・・・・・ 魔太郎と言えばボクの中では11巻を指すわけですけど、その中でも以前雑記で書いたことのある「フランケンシュタインを愛する男」ってのが好きです。 勿論色んな意味で。 初めて「マニア」と言う人種が存在する事を知り、なおかつその対象が「フランケンシュタイン」関連と言う、ある種かなりディープな代物だったことが、後々の自分の人格形成に大きな影響を及ぼしていないことを祈るのみなのですが、何よりも印象深いのはやっぱり探していた本が見つかったときの喜びの感覚や、それを鳶にあぶらげを取られるように、手に入らなかったときの落胆などなどの凄い感情の流れですね。 子供心には新鮮すぎるが、率直に伝わる感情でした。 結構最近同じ様な経験をして、本家の日記にも書いたことがあるのですが、古本市のような出店で、偶然宮崎駿監督の「天空の城ラピュタ」絵コンテ集を見つけたのです。 ところが、なんと目の前で別の男が手に取ってしまったのです。 そいつはじっとそれを読みふけっているので、もう一心に「うらみ念法 その本から興味をなくせ!!」や「うらみ念法 ちょっとでいいからその本を置いて他の本を物色しろ」などを駆使したのですが、如何せん魔族ではなかったので通じやしない。 挙げ句にそいつときたらその本を持ってぶらぶら色んな本を観るもんだから、こっちとしては溜まったモンじゃないわけですよ。何せこっちは休憩時間に来ているのだから戻らなきゃ行けない訳です。 しかも結局そいつタイムリミットぎりぎりでそれだけ買ってやがんの!! くううううううう。気分が完全にコレ ↑その時ボクの目には確かにそいつが、こいつに見えました。ええ、見えました。 しっかし、魔太郎も何もそこまで驚かなくてもいいだろうよ。まあ、読者的にも、同様な体験をしたモノなら誰しも納得できる驚き方ではあるんですけどね。殆ど初対面の人の古本探しに付き合った挙げ句に、その本を目の前でもっていかれる感覚ってのも異常に複雑なモノがあるでしょうけどね。 それにしてもこの男の手とお札、小さすぎです。 古本屋さんは、ある特定の人間にとっては戦場なんですよね。 ・・・・・・・・・ みっつに分けても敢えてまだ魔太郎なんですけどね(どこが短くだよ)。 先日紹介した4巻の表紙は、素晴らしく楽しめる画だったんですが、何気に3巻も相当なモンでした。 それがコレ ↑無視です。完全にそっぽ向かれてます。しかも他の連中のやたらと写実的描線が、魔太郎の孤独感を強烈に際立たせる異常な効果を上げてます。何故A先生もこんな表紙を描く? |
懲りずに魔太郎 今日も又行きつけの池袋サンシャインアニメイトで魔太郎関係を物色したんですけど、先ず「魔太郎が翔ぶ!!」が収録された愛蔵版ブラック・ユーモア短編集の2巻が新刊在庫として置いてありました。 流石中央公論社ですなあ。(そういえばyahooオークションで中公愛蔵版のSF全集に高値が付いていると、「あらら…」ってなります。店頭在庫の殆ど残っていない「征地球論」は別としても、1,2巻は店頭在庫も探せばあるし、普通書店でも注文すれば中公に在庫が残っているハズですからねえ。いやまあ通販だと考えれば良いんでしょうけど、いかんせん冗談じゃないような値段が付いているモンですから) 持ち合わせが無かったので、購入はしなかったんですが、あれってばどうして文庫化の際にハズされているんでしょうかね。そこら辺りも読めば納得できるのかしらん。 ところで問題はその後です。 フと、秋田書店の新装版もちょっと中身を観てやれ…と意地悪な気持ちも半分あって棚にある数冊を観てみました(全巻揃ってないので、ちょっと嬉しい)。 んが、 8巻の表紙を開き観て、度肝抜かれました。 な、な、なんと、「燃えよ! 魔太郎」の扉絵が、修正されていたんです。 しかも、リーの顔の部分が、なんと、魔太郎のリー顔に!!! 何という新装!! これってどういう意図なの? 完全にA先生にやられたって感じです。もうそれはソフトとかハードって問題じゃないでしょう。 いや、ある種こっちの方がハードです。 困ったことに新装版も全部チェックしなければ行けないようですねこりゃ。 新サイトではそこら辺りの違いもなるだけ取り上げたいとは思っています。 ・・・・・・・・・ 同じ場所で「切人がくる!」を探したんですが、やっぱり店頭在庫もみつからないですね。 古本屋さんに何気なくありそうなので、ここは根気よくさがさないとダメですね。ただ、あれ新刊発売の時に全然売れないので、いっぱい返本したんですよねえ… 悔やまれます。 でも読みたいなあコレ ↑こんな服装している赤ちゃんが居たら、別の意味で不気味です。腹話術の子ども含めて。 ではでは。 |