変ドラ第11回
ターザンパンツ
VS
ターザンパンツ
てんとう虫コミック31巻&てれびくん(付録)より
「リメイク 」、という言葉がある。作り直しと言う意味だが、映画などでは近年しょっちゅうと言っていいほど作られている。
テレビシリーズの劇場版とか、白黒だった映画をカラーで作り直したり、とかだ。
中にはリメイクならではの特徴付けが上手くいった好例から、「そりゃ同じだろオイ」と言った悪例まで、多々あるのがリメイクだ。
中には「リメイク」だったのか? とも取れる作品もあるし、「そりゃただのパクリだろ?」とも取れるマズい作品もある。
ところが、漫画ではリメイクという物にはあまりお目にかかれない。作者が再び描き始めたりした場合でもリメイクと言うよりは続編のような扱いになったりする訳で、映画のようなリメイクをイメージする作品はそれほど無い。
しかし、ドラえもんの話の中には「リメイク」と称して差し支えない作品が結構ある。まあ、あれだけ多岐に渡る雑誌に平行連載をしていたり、長期連載になればネタの使い回しも「アリ」だろう。
ところが、全く同じタイトルで、同じ道具を使った作品で、ギャグなどもほぼ同じという作品なのに、まるっきり異質としか言いようがないリメイク作品がある。
「ミッション・インポッシブル2」が完璧に「スパイ大作戦」のリメイクとは言えないのとはちょっと違って、同じキャラクターで同じ作者が手がけていながら、描かれた時期の精神状態が違うとしか思えないのが今回取り上げる作品だ。
例えば同じ食材があるとする。しかし、それが全く違う料理に仕上がる場合がある。
だが、同じ卵があれば玉子料理を作るのが普通だ。なのに、いきなりどこかの国のゲテモノ料理にある、孵化する直前を蒸した料理(中にヒヨコがそのままの形で鶏肉状態の直結状態)が出されたらどうだ?
今回の取り上げる作品を喩えるのにこれ以上の例えはない!(ちょっと大袈裟)
光が有れば影がある。これは物理的真実。その陰と陽をモノの見事に体現した異形の双子。
片やてんとう虫コミックに収録されて陽の目を見ている作品。
片や単行本未収録で国会図書館などでしか読むことが出来ない影の作品。
同じタイトルなのこれほど境遇の異なる作品も珍しい。
ではお送りしましょう。題して
~これが「ターザンパンツ」の真実だ!!~
いっつも書いていますが、前振りは何時も大上段。中身は「なんだ、そりゃ?」がモットーなので、その点了承いただいた上で、先ずはリメイク版の「ターザンパンツ」から。
1981年の小学二年生12月号に収録された本作品は、元祖「ターザンパンツ」から時を経ること4年後のリメイクという事になります。
今回は二つの作品を比較すると言う形式なので、先ずは扉画から
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻112ページより
↑穏やかなドラえもんの表情。ウィンクするのび太。笑顔の犬たち。微笑ましい扉画は、後期ドラえもんの「暖か」さを感じさせる、良い感じの扉画です。実に楽しそうじゃないですか。うん。
話は実に簡単です。
まあ、ターザンパンツなんて言う名前からして安直な道具ですが、デザインがリメイクでも全く変わらない程の単純さなのも凄みの一つ。(アイキャッチ参照)
この作品のキモは道具を使う事=パンツいっちょうになってしまう事。これが、オリジナル、リメイク共に、ベクトルは大きく違うが重要なポイントです。
で、パンツいっちょうになったのび太がコレ
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻113ページより
↑のび太と言えば多少の変遷はあれど、例の襟付きシャツと黒パンツなので、いざパンツいっちょうになるのは結構違和感がある。かっこ悪いってのはまあ年頃の男の子にしてみれば当然。運動会に行われる意図不明の「組体操」とかで感じる羞恥心と一緒です(あれホント何の意図があるのよ?)。
そして、「動物たちと話せて、なかよくなれる」と言うのが、この道具のポイントであり、この作品のギャグ部分のキモです。なかよくってのはターザンだからですね。
そして、ターザンのもう一つのポイントとであるコレ
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻114ページより
↑コマブチ抜きの良い感じの道具ですが、当然コレはターザン得意のツタ渡りの為の道具。その名も「ターザン・ロープ」! …まあ、分かりやすいですな。これもオリジナル・リメイク共に大活躍します。ただ、こちらの道具の凄みは、何もない中空に自在に固定されると言う点で、これはオリジナルを凌駕している。オリジナルは実際に木の枝にちゃんと結びつく。
恐がるのび太を無理矢理突き飛ばすドラえもんのスパルタ加減が程良くていいんですが、のび太は直ぐに要領を取得して、すっかりターザン気取り。
いやあ、小学二年生掲載としての模範的「ほんわか」さがバッチリ!
ご機嫌なのび太は当然ターザンの専売特許である「雄叫び」
アーア、アー!
この雄叫びが、この作品の「漫画ならでは」の面白いギャグを産み出す。
つまり、上記の叫びは
「カラスを呼ぶ声」
ちなみに「犬をよぶなら」
アーアーア
そして「ネコなら」
アーアーア
わはははは。同じだっての。ここら辺は擬音の魔術師F氏ならではの荒技ギャグ。
そして、当然のび太がやってくれます。
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻116ページより
↑イキナリディープ・コアな代物! 動物じゃない所が抜群に最高。思い立ったら吉日演出がココでも炸裂。しかもドラえもんの前振りがイカしていて
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻116ページより
↑ドラえもん真顔で、のび太も真顔。さあすがこの二人は「分かってます」よ。
もうハチャメチャな漫画ギャグです。レベル高い。でも、ターザンは勿論「ゴキブリを呼ぶ声」なんて必要ないだろうに。キンチョールじゃないんだから。
そして、お約束のネズミを呼び出して、ドラ退場。
のび太は欠伸混じりの「アーア」で、遂に犬たちを呼び出すことに成功して、のび太を追いかけた犬にもお灸を据えて仲直り。いやあ、ほんわかしてまさあ。
が、
これで終わらさないところが、流石F氏。小学二年生相手でも遠慮無しに爆裂ギャグ。
それがコレ
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻117ページより
↑擬音無しズム! 抜群のF「間」が大爆笑。このいきなりライオンギャグは、別の未収録作品「イイナリキャップ」からの転用ですが、おかしいのは同じ。ライオンのボケ面が笑えるんですよね。
元ネタは多分トムとジェリーの「ライオンとねずみ」だと思うんですが(あっちも死ぬほど笑えますが)、のび太の反応の素晴らしさは随一。
それがコレ
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻118ページより
↑あんだけユメギャグしておいて、このまっとうな反応が妙におかしい。平和顔も飛び散る汗もポイント高し。
しかも続けてコレ
「ドラえもん」てんとう虫コミックス版(小学館)31巻118ページより
↑つくづく自己欺瞞を続けるのび太。君が言っても説得力無いって。あんだけいつも寝ぼけてるクセに。いや、逆に言えばだからこその妙なさじ加減なんだけど。あの「頭コチン」&ウィンクが何気にセオリー通りで笑える。
まあ、結局家から逃げ出したライオンだったので、ターザンらしく助けるわけです。
「ぼくの友だちなんだ」
と。良いじゃないっすかあのび太。って感じで。
ドラえもんもすっかりアテられて
「せまい日本のせまい家のせまいオリで、ライオンなんかかうのが悪いのです」
(せまいせまいと、相当ドラえもんも不動産事情での苦しみがうかがえますな)
と、もっともらしいことを言って(ここらは後期ドラの特徴ですか)、飼い主無視してどこでもドアでアフリカへ返します。(人間に育てられたライオンがアフリカで生きていけるわけないだろうに)
で、こんなので終わったらドラえもんじゃないとばかりに、無理矢理良いカッコしようとしたのび太のターザンパンツが木の枝に引っかかってフルチン落ちで
お・し・ま・い
ホントお手本のような、愉快な漫画に仕上がったこのリメイク版「ターザン・パンツ」ですが、
これで納得するほど生易しく善良な読者は、この変ドラ読者にそれほど多くないと言う事を、筆者は十二分に知っています。
お待たせしました。
それではお送りしましょう。
~これが、オリジナル「ターザン・パンツ」の全てだ!~
さあ、このオリジナル「ターザンパンツ」が世に出たのは1977年の「てれびくん8月号」の付録です。ちなみにその2号前の6月号の付録が、かの「分かいドライバー」なんですが、これは決して偶然ではない。はず。
当時F氏の身辺や内面に何があったのかは知る由もないですが、この二作が同時期に描かれていると言う事実は、その異常な精神状態を推察にするにあまりある証拠。
そう、このオリジナル「ターザン・パンツ」は「分かいドライバー」と兄弟と言っても良いほどのイカれぶりなのだ!
これは勿論誇張ではない。それをこれから皆さんは知ることになる。
では、比較としての扉画から
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑笑顔のドラえもんは、「正常への頼みの綱」であり、のび太はこれから始まる運命を予感しての苦悩な表情。これが全ての始まりだ。
この話、細部のギャグなどはリメイク版へと継承されているが、根幹となる話の部分が、まるっきり違っていて、それが断然最初っからズレていて、その加減が凄い。
と言うパターン。まあ、お馴染みだ。自慢になるのは「サファリパークはいいよおお」って事です。もう予感ビンビンでしょう?
で、のび太が珍しく自分で発起する
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑この自信満々ののび太顔からして、この話が大幅に正常からズレている事を既に表している。「つくってやるよ」と、居丈高な態度と、指さし&ウィンク。ジャイアンが「しょうちしないぞ」と脅しの保険も当然の似合わなさ。加えて「ほんもののアフリカ園」と言う、現実問題JAROに一発で連絡確実の芸の無いネーミング。
のび太は大抵こういった場合に、後先考えないのがパターンだが、既にズレまくりのこの話では、何から何まで考え抜いての行動宣言なのだ。
その考えとは
どこでもドアをアフリカにつなげて、そこを入り口にする
と言う、安直だが実に理にかなった「応用」に依るアイデアであり、「宇宙ターザン」でも使われる方法である。
この終始菩薩面で事を進めていくのび太には、違和感と共に置いてけぼり感が強くて、初っぱなから読者の手を離れまくり。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑即「金」。まあ、それでこそのび太なんですが、入り口まで自作しての自立ぶりは実にのび太らしからぬ行動力だ。
さっそくアフリカへ旅立つ二人だが、動物なんていやしない。結構そこら辺はリアルである。しかし、その時ののび太のコメントがキてる。
曰く
「みんな、サファリパークへ行ったのかしら。」
アウトですなあ。本末転倒はのび太の十八番ですが、「かしら」も合わせて良い感じ。
そこでお約束とも言える「桃太郎印のきびだんご」が登場。
(どうでもいいんですが、友だちに「きび太郎印の桃だんご」だと思っていた奴がいた。「桃だんご」は旨そうだが、きび太郎って誰だよ?)
その時ののび太の台詞が何気ないんですが、ポイント。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑覚えておいていただきたいのは、ズバリ「けらい」と言うパワーワード。キーワードの1です。のび太が権力志向の強い事はよく知られていますが、何気なく口を出ると、説得力ありますよ。ペット飼う資格無し。
「さっそく食べさせてくる」
と菩薩面でだんごをアフリカの大地にまきまくって、いざ開園。
だが、のび太はココでも普通の状態ではなく、
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑このコマには数多く「変」ポイントが多いので、一つ一つ行きましょうか。
先ず、箱に描かれた「きっぷ20円」
20円と言う価格もポイントですが、箱に明記するそれブリが変。
のび太の断固たる表情も握り拳も変なのは、自分の力の証ですかね。
でも、「ほんとのアフリカ」って言っているように、これって全然当初の目的とズレてますがな。「戦争映画が見たい」と言う奴を紛争地帯に送り込んで「ほんとの戦争だよ」と言っているようなモンです。
まあ、「20円もとるの?」と言う驚きも、時代を差し引いても笑える金銭感覚ですが。
「飛行機で行けば何十万もかかるんだぞ」
と実業家ぜんとした駄目押しも素晴らしく、得意満面にいざ一行はアフリカへ連れて行かれる。
しかし、そこに居たのは
きびだんごをひとりで食べてしまったゾウが一頭だけ。
ジャイアン曰く
「これで20円なんて高いぞ!」
生ゾウなんて何万出しても触れないでしょうけど、あくまでも20円にこだわる感覚がいいんですな。
だが、もうきびだんごはない。さて、どうするか?
ここで再びキーワード2
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑でましたグルグル。さあすが兄弟。
そこで登場するのがオリジナル・ターザンパンツ。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑冷たいドラえもん。自分で穿かせておいて。そして、得意満面ののび太の貧弱体型がリアルだ。
「どうみてもむり」「まっ、いいや」「どうでも」
ドラの続けざまのブロー。
そういうときののび太って、それを意に介さずに大体笑顔なのが痛々しいんですけどね。
リメイク版とちがって大喜びでパンツいっちょうになるのび太は、やぱりアフリカという大地が産み出す開放感なんでしょうね。
では、なぜパンツいっちょうがキモと前述したのか? それは後でイヤという程分かります。
さあ、いよいよここあたりから、ただでさえズレているこの話が、もっとネジれてきます。
動物収集と言う題目にしたがって、ジャイアンたちをほったらかしにして駆け出すのび太とドラえもん。
ジャイアン曰く
「お客をほったらかして行っちゃった。むせきにんだ!」
ごもっとも。20円の入場料がちゃんとお客の自覚を生んでいるのみならず、無責任だと営利側へのご意見。まことにマトモだ。
しかもゾウはひるね。大爆笑!
が、
ここで退屈したスネ夫の提案が、この物語を決定的に湾曲させる。どの方向へ? そりゃ間違った方向ですがな。
曰く
「たんけんすればおもしろいと思うよ。」
完全に水曜スペシャル的ムード漂うジャングルへ一行は向かう。
そして、決定的なコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑人食い土人!!
そして、ここで話は大いなる期待…いや、不安を残して、のび太とドラえもんに変わる。ちぇ
ここでも動物語ギャグが使われるのだが、オリジナルはもっと変則的で狂ってます。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑ブヒヒヒン!
「ブヒヒヒン」=「ぼくを、けっとばせ」
「ブル?」=「いいのか?」
「ブルルブビブビ」=「けとばせ」
字数が全然合っていないのも素晴らしいが、この行動の会話にまるっきり意味がない所が笑える。「いいのか?」がポイント高すぎます。しかも言うのはシマウマ。
さて、珍しくのほほんとしたおだやかムードでギャグが続くのだが、それで納得できないのは、このページの読者もF氏も当然分かっていて、直ぐにコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑きたきた。キましたよ。ジャングルの奥から不気味な音色。インディアン=のろし。土人=太鼓。コレ常識(嘘)。でも、のび太なんで両手が前?
いよいよ、このターザンパンツのターザンパンツたるターザンパンツによる凄まじい展開の始まり。
「三人の子どもが土人にさらわれた?」
と、鳥のことばが分かって有頂天ののび太だが、ドラえもんのツッコミにターザンとして覚醒。例のゾウにまたがって
「かっこよくいそげ!」
とやる気満々。
だが、ゾウはゾウなので、その遅さに業を煮やしたターザンのび太は、いよいよ例の「ターザンロープ」を使ってジャングルを突き進む。
ここでも恐がるのび太を、ドラえもんが突き飛ばすスパルタ式なのだが、オリジナルでは、ドラが渋り顔なのがポイント。しかも直ぐに要領を得ないオリジナルターザンのび太は、振り子の原理で戻るやドラえもんを吹っ飛ばす。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑このドラえもんの顔。もう彼もこの作品がまとまな展開にならないことを薄々勘付いているんでしょうね。やる気がまるでうかがえません。
しかも、要領を得るやのび太に
「あれっドラえもんは?」「しょうがないやつだなあ」
とカマされる始末。
そして、
宴の始まりだ。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑「どうなるんだろ」って、そりゃ「食われる」に決まってます。最悪の展開。かつて漫画の世界では、これは日常だった。
もう、ここら辺りの自主規制描写の連発は圧巻。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑森山塔のエロ漫画で「デマコーヴァ」と言う作品があるのだが、あちらの食人描写の凄惨さも特筆級トラウマ物の凄まじさだが、あちらは18禁。こちらは「てれびくん」
コック長の舌なめずりがポイント高い。さすが旨そ描写のF氏。ここでも手抜き無し。
そして、木陰からのぞき込むターザンのび太の、ぶっとび発言がコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑素晴らしき自己欺瞞。握り拳や胸にあてた手が煽動家真っ青のその気感。でも煽るのは自分、煽るのは言い訳。ですがね。目がもうイキ過ぎていて丸。それにしても「パンツのおかげ」っすか。
ぶっ続けてコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑今度はグルグル(ジャングルバージョン)をバックに、大力説&他力本願。しかも他力を「けらい」呼ばわり。こんなターザン、ターザンじゃない。ディズニーもバローズもがっくり。両手拡げての代弁説。誰に言ってんの、のび太?
しかも逃げようとする始末。
だが、もう正常な軌道から外れた、この作品にタガと言う言葉はない。読者を暗黒の底へ真っ逆様のコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑「一ばんでなくてよかった。」 これぞタガなしの、丸裸の、魂の本音。でもいきなりしずちゃん。土人も良い趣味してます。
(*これはドラえもんです)
これですめば警察はいらない。PTAもいらない。自主規制もいらない。
問答無用のコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
まだまだあ!!
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑ディープ・インパクト。言うべき事があるか? いや無い! 素っ裸のしずちゃん、石のまな板、斬首刀。心臓停止のカニバル神器三連発。もう泣くしかない。が、正座してる場合じゃないぞ。
これで逃げたら、のび太は人でなし。未来の妻を救いにいざダイブ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑でも、コレ。でも、これってリメイクだと落ち。オリジナル? これで済むわけがない。ここからが本番。
フルチンのび太だが、パンツが脱げればターザン失格。それはただの
食材だ。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑のび太、ここにきて主人公の資格復権。ここでこうも見事に鍋に落ちるのは凄い。しかも「アチャチャー」 こうこなくっちゃ。でも話としては失格。
ジャイアン&スネ夫のツッコミも、自らの危機的状況をかえりみない素晴らしいモノ。ホント「なにやってんだ」としか言いようがないし、ホントにバカですよのび太。良いとこ無し。
では、この話はどうなるのか?
ここがキモです。キモ。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑命よりもパンツ。生よりも恥。しずちゃんは女の子のかがみですが、この行動がさらに作品を歪ませる。なんつっても背後に迫る槍土人が素晴らしい。抜け目無く土人。
もうここまでキたら何も止まらない。カニバル・カーニバルの開始。土人も黙っていられない。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑恐ええ。恐いですコレ。共食いと言う、原始的恐怖の中でも最高レベルの恐怖の爆発。
元来動物は全て「食べられる」と言う食物連鎖の中で生きている訳で、人間だってその枠組みの中に居る。しかし、その原始的恐怖は現実世界では影を潜め、理性と文明と社会がそれを別世界のモノにしている。だが、共食いはその恐怖とは別の恐怖がプラスされる。人間に食べられるのだから、食われる方は絶対に納得できない。
しかも相手が「疑問に思っていない」場合はなおさらだ。
もっとも、この作品の中では、それがギャグになる。恐怖と笑いは表裏一体と言いますが、一歩間違えば絶対恐怖のこの展開も、F氏にかかれば大爆笑の絶対ギャグと化す。
その証拠がコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑しずちゃんターザンの叫び=「動物たちみんなこい。ターザンといっしょにたたかえ」に目覚めるドラえもん。
は、良いとして、何故
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑君はロボットだろう。まあ、ネコ型なので、プログラムの中に動物として本能が組まれているんでしょうかねえ。取りあえず雄叫び上げて大暴れのドラえもんアニマル軍団は大爆笑&大スケール。
これでこそのターザン・モチーフ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑これでこそターザンであり、ターザンパンツの意味がある。しずちゃんまでパンツいっちょう。ジェーンになるべき配置を逆手に取った荒技級の展開。しずちゃん大暴れ。
しずちゃんがイジられる話は数あれど、これほどまでにズタボロ&大活躍する話は他に類を見ないでしょう。お風呂でも素っ裸になる話が珍しいのに、裸正座までさせられての(ある種)大盤振る舞いの大サービスぶり。しかも食べられかけるし。
もう「分かいドライバー」の余波といいますか、分かいドライバー電波がこんなところまで影響を及ぼしての無茶苦茶ぶり。
F先生は絶対に「てれびくん」を何か勘違いしていたとしか思えないですが、編集者もそれに気付いたのか、これ以降「てれびくん」付録への掲載は無くなった。
この話、これで終わってもいいんですが、オチがまた変ドラ読者には外せないんです。
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑まあ、オチのてきとうブリもさることながら、やはりココはコレ
「てれびくん」1977年8月号付録(小学館)より
↑この白けっぷりこそ、真骨頂なのは、全白ドラファンの人たちには説明不要ですよね。
と言うわけで、国会図書館に眠る暗黒ドラえもん傑作選(今勝手に付けた)の中でもとびきりの逸品である「ターザンパンツ」の魅力がちょっとでも伝わりましたでしょうか?
ホント、こういう底抜けな作品を、あの静まり返った国会図書館で読む感覚ときたらもう…国の中心であれだけのヤバさを味わうアナーキー加減が絶妙の感覚です。
まあ、単純に笑いを堪えるのが大変なんですけどね。
ちなみに、オリジナル・ターザンパンツを読むには、コロコロコミックvol.8を借りる必要があります。あちらの再録でないと、てれびくんの付録は図書館にはないので。
ただ一言、コレと「分かいドライバー」を読むためだけに国会図書館へ行く価値は、大いにあると断言したい。
ではでは。
【追記】
本文でよく出てくる「国会図書館」ですが、現在ではドラえもんは全エピソード(一応)大全集で読むことができます。「てれびくん」の付録という特殊な掲載だったために、てんとう虫コミックス版に収録されていない場合、今回のように再録されたコロコロコミックを国会図書館で読むという手段しかありませんでした。それが今やその付録掲載エピソードもすべてまとまって読むことができます(再録されていなくて文字通り幻だったエピソードも)。何度も書いていますがつくづくいい時代になったと思います。とは言え、大全集が発売されてからも何年も経っております。新刊書店ではすでに入手が難しい状況でもありますので、入手するなら早いほうが良いと思います。
とはいえ、何と言っても題材が題材、自主規制という名の言葉狩りも致し方ない現状。やはり、オリジナルを「オリジナルのまま」読むにはやはり国会図書館に行くしかないことも付け加えておきます。なんつっても「人食い土人」ですからね!!!
ではでは。