雄山バーガー

と言うわけで、新世紀になっても懲りずに「美味しんぼ」にハマっている状態です。

ただ、後半部分は最新刊まで追いついてしまったので、また文庫の新刊を待ち望む状態になっています。なので、文庫の再読なんてしてしまったのが運の尽き。初期のハチャメチャさがまたまたツボを突いてくれました。

まあ、事雄山に関してはやはり初期から中期にかけての傍若無人さや、小山の大将状態や、やつあたりといったような理不尽さが大きなポイントなので、そこら辺が大好きなボクとしては強烈に好きな話も多いんですね。

中でも文庫版6巻に収録されている

「ハンバーガーの要素」

と言う話が(まあ、タイトルからして予感ひしひしですが)、雄山的に「まいった!」「降参」としか言いようのない爆発作品でした。

もう登場するやいなや問答無用のコレ

↑とにかく雄山ってのは怒る原因ってのがショボければショボいほど反比例するように空回りして大笑いできるんですが、もうハンバーガーなんてそれだけでノックアウト級のヘヴィーな爆笑。ハンバーガーに対して「だとおっ!!」は雄山が言うからこその至高の境地。

しかも、

「なにいっ!!」

って、あくまでも雨だれ二連発までしての激怒。ははははは。

それにしても美食倶楽部を辞めてハンバーガーショップを開きたいという本編の主役宇田君なんですが、何故雄山が何か書いている時にこんなこと切り出したんでしょうかねえ。時と場所を選べって感じの命知らずブリです。

芸術に取り組んでいる時に、やおら「ハンバーガー」なんて切り出された日には雄山の激怒も更に笑えるってモンです。

この後も初期雄山ならではの暴言がコマ連続で炸裂。

「味覚音痴のアメリカ人の食べるあの忌まわしいハンバーガーを!!」
「失せろっ!! 愚か者に興味はないっ!!」「二度と私の前に姿をさらすなっ!!」

等々、後期雄山からは想像もつかないような差別思想爆発。しかも「さらすな」と言う高等技術も披露。

ここまで言わせるからには花咲アキラ先生も負けてられないぞとコレ

↑憤懣やるかたなしとはまさにこういう表情なんでしょうなあ。凄まじいエモーション。

でまあ、興味本位…いや、気になった雄山が、宇田と山岡が準備している所へやってきますが、ここでも偉そさ極まるセリフ連発。

「こんな与太者」

と山岡を一蹴するや、それで終わらないのが初期雄山の醍醐味。

曰く

↑下衆な!! これがこの話のキーワードですが、ちなみに変換で出来ませんでしたよ、家のATOKじゃあ。早速雄山語録登録しなければ。

ゆう子さんもまあ、こんな人を「義父」だのなんだのと信奉しちゃって、宗教の…いや食べ物の力というのは恐ろしいものですわい。

ちなみにこの頃の話では、ゆう子さんときたら面前で雄山を「海原雄山」と呼び捨てにしていますが、途中から「海原雄山氏」となります。この頃から毒気に当てられてきたご様子。

しかしまあ、山岡の絶縁納得の悪ブリにはしびれますなあ。

しかも、勝手に来ておいて、いけしゃあしゃあと宇田に向かって言い放って曰く

「味を見に来てやった
「食わせてみろ
「ハンバーガーとやらを」

等のお約束の居丈高ブリを何とたった一つの吹き出しでやらかします。

そして、極めつけなのが出されたハンバーガーに対するコレ

↑ドオオオオオン!!! 下卑た!!! こおれも変換しません。登録登録。それにしても腕組みで「どうやって食えばいいんだ。」ってのは凄すぎます。完全にボクの読んでいない巻で別の雄山に入れ替わっているんでしょうねえ。多分お兄さんか何かが見かねて。まあ、この人は別人って事で。

でも、こっちの雄山のほうがボクは好きです。

そして、ここで外せないのが、食い方を問われた宇田君の返答。

何と

「かぶりついて頂きます」

わはははははははは。

もうこれコントですよコント。それも最高のコント。こんなの誰も書けないですよ。雁屋哲氏は天才ですホントに。

当然

「こんな物は売り物にならんっ!!」

ってなモンで帰っちゃうんですが、その後ああだこうだと話があって、原因究明成功。宇田バーガーは大成功。

そして、実は影の主役とも言うべき中川さんがやってくれます。

真顔で箱に入ったハンバーガーを雄山の食卓へ持ってくるんですよ。

ただし、流石師匠の雄山ですから、逆転の払い腰が電光石火で決まりのコレ

↑もうここからの二人の絡み合いは必読としか言いようがないんですが、二人とも終始真顔なのがとにかくポイントです。まあ、当人はマジメなんですから当たり前ですが、笑わずにはいられないです。

だってコレですよ。

↑これこれ、この中川さんの顔がいっつもいいんですよね。この二人、最高のバディですなあ。

雄山もさすがの横綱相撲で、ハンバーガーをかぶりつきながら、終始蘊蓄を垂れまくるという壮絶なコトしてくれます。

「むう……どっしりした歯応え……」
「パンが力負けせずにそのハンバーグを受け止めている」
「付け合わせのトマトと玉ネギの素性の確かさも楽しめる」

しかし、最後には言うに事欠いてコレ

↑このコマの面白さを説明するのは相当困難なんですが、ハンバーガーを放り込むという異様な光景と、アメリカ人蔑視の雄山節との絡み合いが、豊饒と言いますか、野卑じゃないと言いますか、金波銀波にたゆたうって感じでしょうか。まあ、ゆう子さんなら先ず間違いなく「何も言いたくない」って所でしょうかね。

もっとも、これで済まないのが雄山の雄山たる所で、超絶技法のコレ

↑出たああ! 十八番中の十八番、「言いがかり」! サバの時の「お皿がよくない」理論に負けずとも劣らない、負け惜しみの美学。雄山ってのは、インド人とかも蔑視なんでしょうねえ、こんな事云っているからには。

如何せん後期雄山はこういう味が無くなってしまって非常に残念無念。まあ、入れ替わって居るんでしょうから仕方ないですってとこですか。

オチの捨てぜりふ

「宇田の愚か者めが…」

まで決めてくれて、雄山圧勝の巻でした。

この巻と来たら、有名な

「冷やし中華だとっ!?」
「あんな物は中華料理なんかじゃないっ!!」

も読めてかなりのお買い得なので、初期雄山信者は座右の書ですね。

ホント雄山最高です。