ENTER THE MATAROU
どんな連載モノでも傑作の一本や二本は産まれ得るモノです。
連作短編となるとキャラクターが出来ている分、連載という条件もあって冒険もしやすくなりますし、話の組立も在る程度のパターンで作られるからです。
ところが問題作……それも突然変異としか思えない……今までの流れとまるで違う、作者の中での流れのみで作られてしまった作品は、同人誌でもない限りなかなか登場する機会はない。
ここに紹介する話は、そんな異形の極めつけと言いますか、当時の勢いのみで作られた超問題作なのです。
それぞ
うらみの85番であるコレ!!
『魔太郎がくる!!』藤子不二雄A(秋田書店)秋田チャンピオンコミック8巻より引用
↑決して同人誌じゃないですよコレ。ホンモノです本物。やってくれますよ、流石A先生! クンフーゴルファー竜はダテじゃないです。
それにしても、魔太郎でもヤってしまう根性というか、タガ外れというか、嬉しくて仕方がないです。
今回はこの超問題作を集中特集!(実は大のブルース・リー・ファンなもんで…)
この話ときたら、事細かにリー・リスペクトというか、A先生も好きよのおお、とニヤニヤしっぱなしの18ページなんですが、とにかく冒頭からストレートに「燃えよドラゴン」に夢中になっている男子中学生が、その気マンマン状態で話題沸騰している場面から始まる。何年も前には、テレビで放送するたびに日本中の中学校では、ごく日常的に観られた風景を活写。そこに女子生徒が一人も居ない所まで忠実な描写。
そして金持ちのボンボンが招いた拳法の先生に、魔太郎たちもならいに行くのですが、結構筋の良い魔太郎にそのボンボンが嫉妬するや、ヌンチャク攻撃で恨みを買う(いいなあ、このパターン)。
途中途中で、実にさりげないながらもA先生による嬉しくなるような、良い科白連発。魔太郎のコレも白眉。
『魔太郎がくる!!』藤子不二雄A(秋田書店)秋田チャンピオンコミック8巻より引用
↑全中学生ドラゴンたちが常に母親や女子生徒に(いや、中学生ドラゴンには女生徒の友達は居ないから、嘘です)言い続けるこだわりの科白。
握り拳と首の角度とポーズが、何気にリー入ってます。
上目遣いでやる気マンマンの魔太郎がとにかく笑えるんですが、道行くときまで
「ヒョッ!」「ヒェッ!」「ヒホッ」
と行き交う人に怪訝な表情でみられる始末。まあ、これまた中学生ドラゴンには日常茶飯事なんですが。
もっとも、満賀ときたら映画みたら常にイタコ状態で富山の住民を混乱のドツボに陥れていた訳ですから、やってることは何にも変わっていないと言うことでしょうな。
そんなんですから、服を着替えたりなんかしちゃった日にはスッカリできあがってしまってのコレ
『魔太郎がくる!!』藤子不二雄A(秋田書店)秋田チャンピオンコミック8巻より引用
↑決まったあああ!! 腰の部分が見事にリーです。ポーズは中学生ドラゴンならラジオ体操第一より完璧に覚えているお馴染みのモンですから、魔太郎への親近感が半端じゃない。
でもメガネは外そう。
お約束通りヌンチャク攻撃をくらったブルース・魔太郎にしてみたら、黙って入られずに
「う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」
カッコイイ!
が、
もっとカッコヨクなるのはココから。
もう止まらないA先生もA先生で、すっかり筆にリーが乗り移っての、怪ペン音が叫ぶ。
そうなったらコレしかないでしょうの極めつけ!
『魔太郎がくる!!』藤子不二雄A(秋田書店)秋田チャンピオンコミック8巻より引用
↑皮膚がないです、A先生。
うらみ念法ここに極まれりって所でしょうか。「ボディー移し!!」ですからね。勝手にリーの肉体を借りる魔太郎の、「それうらみってゆーより、自分がリーになりたいだけじゃん!!」と言う、全中学生ドラゴンの妬みと羨望を一身に浴びるこの究極の念法(じゃねえだろう。まあいつものことだけど)。
バックの炎がシンパシー高し。
それにしても、基本状態の魔太郎のガリガリボディーがすげえですよ。いつもの牡丹柄シャツを脱ぎ捨ててまでマントにこだわる魔太郎もカッコイイ(って、これでマントがなければ何が何だか分かりませんがね)。
そして、魔太郎十八番の、人形への八つ当たり(それが本人に反映する、実に自分の手を汚さぬ手際よさ)。
そのブルース・魔太郎・リーの魂の叫びがコレ
『魔太郎がくる!!』藤子不二雄A(秋田書店)秋田チャンピオンコミック8巻より引用
↑燃える!! 完全にあの世とこの世を直結状態! それでも顔は魔太郎のママなのは、藤子不二雄両先生の中では不文律の守り事。だからこそこれほどの凄さ。うらみ節も中黒無しでの横書き絶叫!!右の手の指がリー!!
でもせめてメガネは外せ。
そしてとどめ!!
『魔太郎がくる!!』藤子不二雄A(秋田書店)秋田チャンピオンコミック8巻より引用
↑張り紙の落書きに向かっての大跳躍&気合い!! 庭でこれだけの大暴れを裸でマント姿の息子がしていたら卒倒モンですが、カッコよさとイタコ状態は止められない。勿論そこへ、サターンの関与する余地なし!!
もう完全に魔族もクソもない、たった一人の中学生ドラゴンがそこに居るのみ。
こんなの見せられたら秋田編集者も観念せざるを得ないでしょうね。(まあ、当時は日本中がドラゴン状態だったはずですから、こんなもの良くある日常の一風景だったんでしょうけどね)
だけど、何度でも言います。
なにも魔太郎でしなくてもいいっしょ。(でも大好きですコレ)
ではでは。
(おまけ)
↑二人で一人の藤子不二雄ですから。
『燃えよ魔太郎』は上記のコミックに収録されています。
全人類の必須科目。